12月になったと思ったらもう月半ば。2021年も残すところあと2週間ほどとなってしまいました。12月になると毎日が駆け足で過ぎていくようで、年末までにやることをあれこれ考えると焦ってしまいます。まずは来年の手帳とカレンダーを買わなくては。
年末近くなると書店や文房具店に来年の日記帳や手帳が並び出します。こうした光景は年の瀬の風物詩ですが、12月の季語に「日記買う」があります。日記は年に一度、新年の前に「買う」ものなので、年末の季語となっているようです。
「日記買う」という季語の俳句は、手元の歳時記を見るだけでもたくさんあります。
人波のここに愉(たの)しや日記買ふ 中村汀女
少年のごとし夢見て日記買ふ 高石高平
日記買ふことが愉しく買ひにけり 吉屋信子
新年を迎える喜び、そして新しい年を迎える高揚した気持ちが伝わってきます。年齢に関わらず新しいことを始めるときは心が弾みますが、特に真っ新な日記帳や手帳に書き始める時は気分がいいものです。来年への希望や期待が込められた句です。しかし明るく希望にあふれた未来ばかりが目の前に広がっているわけではないことを気づかされる句もあります。
何時までの余生と思ひ日記買ふ 杉森干柿
三年は生きると信じ日記買ふ 吉村ひさ志
日記帳を買うときに、来年はどんな年になるのだろうと、先行きへの不安がちらと頭をかすめる人もいるでしょう。一日一日を積み重ねて暮らしていくことが生きること。日記に一日分を書き留めると、それは人生の一日分が終わったことになります。でもだからこそ一日一日を充実させよう。日々の喜怒哀楽を大切にしよう。特別な思いが秘められている句だと思います。
日記帳や手帳が並ぶ華やかな売り場の前で立ち止まっている人たちは、いったいどんな思いで買い求めるのでしょうか。