沖縄の布 -琉球紅型、城間栄順展-

城間栄順氏の琉球紅型展の記念作品集、NHK出版 前回、沖縄の紅型という染めについて書きましたが、その後、紅型の名工、城間栄順氏の琉球紅型展(10月3日から9日まで)が東京銀座で開かれたので行ってみました。紅型宗家第15代となる栄順氏が第二次大戦の激しい戦場となった沖縄から、その父、栄喜氏とともに偶然にも逃れて生き残ったことは、琉球紅型にとっては大きな幸運でした。

戦後、何もかもが焼き尽くされてしまった沖縄で、必死に紅型の復興を目指した栄喜氏、その父の下で紅型を学び、父亡き後もこの紅型の伝統に新しい息吹を吹き込む仕事を続けている栄順氏。運命の不思議を感じるとともに、現在の紅型の興隆の影にはそれにかけた人々の強い情熱を思い起こされずにはいられません。

 今回の『宝布に華咲かち』と題した紅型展では、日本に残るまさに宝布ともいうべき素晴らしい布に、栄順氏の豊かな紅型染色が施された作品が数多く展示されていました。宝布とは、越後上布、結城紬、宮古上布、喜如嘉の芭蕉布、久米島紬、松岡姫。ガラス越しに明るい光が差し込む会場で、越後上布や芭蕉布の透けるような美しさに、さらに栄順氏の手による繊細な模様が加わって織りなす世界はまるで夢のよう。制作にはどれだけの時間がかかったことだろうと気も遠くなるような細かい図柄に華やかな色彩が映える久米島紬は無論のこと、藍色が印象的な芭蕉布や宮古上布の染色にもとても惹かれました。沖縄の自然に育まれた芭蕉布と紅型はとても相性がいいのですね。

 この素晴らしい布と染め、そして明るい光とあと風さえあれば、いながらにして夏に訪れた沖縄の海辺にタイムスリップしてしまいそう…。作品のほとんどは着物になっていて、私もいつかこんな素晴らしい着物に身を包むことができたら、と思いました(写真は今回の作品展の記念として出版されている『 宝布に華咲かち―城間栄順 琉球紅型作品集』です)。