春一番に庭の片隅で顔を出すふきのとうにはじまり、春の訪れを感じさせてくれる木の新芽や草。子どもの頃は苦手だったはずの香りと苦味が、年を重ねるごとに忘れがたい味になったきました。
先日、郊外に住んでいる友達から「辛子びたしにするとおいしいよ」と、地元の菜花をいただきました。先の方にちょこちょこと咲き出している黄色い花があまりに可愛いので、ガラスの器にいれて飾っておいたら、翌日には満開の菜の花。にょきっと伸びた茎はしっかりと朝日の入る方角を向いています。成長期の子どものよう。パワフルな生命力。
昔から「君がため 春の野に出て 若菜摘む……」とうたわれているように、早春の野山で芽生えたばかりの木の新芽や草を探して摘むのは、春の訪れを実感できる楽しみのひとつですが、春の息吹を食べることは、生まれたばかりの青いものの生命力を身体に取り込み元気を分けてもらう知恵でもあったのですね。