夏到来! 子どもにとっては嬉しい夏休みも、子どもに振り回される私にとっては嬉しいものかは甚だ疑問。とはいえ、こんな風に子どもといっしょに過ごせる夏はきっともうそう多くはないことを思って、今年は夏を満喫してみましょうか…
さて、青梅線青梅駅のほど近く、秋川街道沿いに「壺草苑」という藍染の工房があります。建物の脇に小学生ぐらいなら頭からすっぽり入ってしまいそうな大きな壺がいくつも並んでいました。建物の中に一歩足を踏み入れると、そこは藍染のギャラリー。デザイン、型おこし、染め、縫製まですべてをこの壺草苑でするという、スカーフやバッグ、帽子、テーブルセンターやコースターなどの小物から洋服まで、素敵な作品が並べられています。
その奥に、藍染の作業を行なう工房がありました。藍の染料が入った壺、これは外に並んでいた壺と同様のものだろうと思いますが、それが一段高くなった土間にほぼ全部埋められて口だけが上を向いて並んでいました。ここで藍染を、ほんのちょっとだけ体験してみることに…。
どんなふうに染まるだろうか、と想像しながら、白いハンカチを思い思いに輪ゴムで縛ったり、紐で結わいたりしていきます。そのハンカチを先ほどの壺の染料に浸し、静かに揉みます。しばらく揉んでから染料から取り出して見るとハンカチは青色に。これを広げて空気に触れるようにします。それからまた染料に入れ、揉んで取り出して広げる、という作業を何回か繰り返します。そうしていくうちに、ハンカチの青がだんだんと濃くなっていきます。もういいかな、というところまで作業を繰り返したら、今度はハンカチを軽くすすぎ、止めてあったゴムや紐を取り外します。水の中でゆすぎながら広げてみると、きれいな模様ができていました。
それにしてもギャラリーに並ぶ作品の藍の色の美しいこと! 模様の繊細さにも目を奪われます。額縁の中には絵画風の複雑な藍染が飾られていて、いったいどのように染めていくのだろうと思いました。バッグなども欲しくなったけれど、きょうはお手頃なコースターをお土産に買って、できあがったハンカチも持って帰路に。夏休みの自由研究にもお勧めです。
藍染について
日本の藍染の原料は、一般には植物の「たで藍」の葉。葉をよく見てみると、ところどころ青くなっているところがありましたが、たで藍の青はそのままでは水に溶けず、移染しません。草木染めでよくするように煮出しても染まらないのです。たでの葉を発酵させて「すくも」を作り、さらにこの「すくも」に灰汁やふすま、日本酒、石灰等を加えて発酵させる「藍建て」という工程を経て、繊維が染まるようになります。よい「すくも」を作ること自体にも技量が必要で、藍のおもな産地である徳島に現在、藍師の方が5名いらっしゃって無形文化財に指定されているそうです。
壺草苑では「藍建て」し、できた染料を使って染めるのですが、染め方は何通りかあります。糸を染めてから生地を織る方法、白地の生地に糊置きをしていき、その部分だけ色が染まらないようにして模様を浮き出す方法、そのほか、筒書きや絞り染めといった技法も組み合わせてさまざまな模様、濃淡を作り出すことができます。
化学繊維を染めることができないという藍。綿と麻と絹とを、伝統の藍で染めていくことは、化学染料が主流となった現代でも、決して途絶えてほしくない伝統の技ですね。