これはいろは堂でいつの日かご紹介できたらなぁと思っているあこがれの大皿です。九谷焼作家の人間国宝、吉田美統(よしだみのり)先生の作品です。初めて作品を拝見した時、その作風が私の持っていた九谷焼のイメージとあまりにもかけ離れていたので、え、どうしてこれも九谷焼なの?と考え込んでしまいました。その疑問とともに、薄緑色の大皿に描かれた金色の蓮華の花の絵がずっとずっと脳裏に焼きついています。

釉裏金彩大山蓮華文

先日思いがけず、私の住んでいる町の隣の駅のそばにあるデパートで、このあこがれの作品をたっぷりと鑑賞することができました。私は横浜に住んでいるのですが、石川県まで出向かずにこんな身近なところで吉田美統先生の作品を拝見できるなんてラッキー!とばかりに勇んででかけました。

初日の朝一番。閲覧者は私ひとり。10点ほどでしたでしょうか、台の上に鎮座する大皿、鉢、壷、花瓶、水指、茶碗をひとつづつゆっくりと拝見しました。お皿の裏までもじっくりと。薄緑色の地色(紫と赤の地色のものも1点づつありました。)に金で葡萄、木槿(むくげ)、鉄仙などの花木が描かれています。どれも釉裏金彩(ゆうりきんさい)という技法のもので、金箔が施されているのですが、金箔キラキラという感じはなく、優しくて上品な印象です。

薄緑色の地色の上に金箔で描かれている花木。まるで絵筆で描いたような繊細な絵。中でも木槿(ムクゲ)が描かれている大皿に惹かれました。木槿の花びらの柔らかさとそしてあのざらざらした葉の質感までも感じることができるのです。金箔といえば厚さ何ミクロンという、わずかな風にさえふわりと飛んでしまうほど薄い薄い紙状のものです。それを絵柄にあわせて切って貼る。花や葉の微妙なところまでもいったいどうやって表現されるのか、ため息とともにしばし見惚れてしまいました。(続く)



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