万葉の歌人、山上憶良は次のように詠んでいます。
秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花
萩の花、尾花、葛花、なでしこの花、女郎花、
また藤袴、あさがほの花
万葉の時代から日本人に親しまれ、着物地や器にも多く描かれる秋の七草。尾花はすすき、あさがほの花は実は現代の桔梗の花にあたります。なでしこには数多くの種類がありますが、七草に入れられているのはカワラナデシコという種類です。
春の七草は健康を祈って七草粥にしていただきますが、春の七草に栄養補給という意味があるとすれば、秋の七草には薬としての効果があります。
くずはその根が葛根として風邪に効くとされていますし、くず粉は身体を温めてくれる働きがあります。カワラナデシコは種子の部分を煎じて飲み、利尿効果が期待できます。女郎花は産後の肥立ちによいとされ、藤袴は入浴剤として、また婦人病に、桔梗はのどの痛み、咳きなどに効果があるとされています。ススキは… この薬効は調べてもわかりませんでしたが、いかにも秋らしい風情をもったこの植物は、やはり秋の草としては欠かせないでしょう。
古代の人は、身近にある野の草花に季節を感じて、心も身体も癒されていたということでしょうか。
今回はカワラナデシコと葛の花の写真がとれませんでした。ご覧になりたい方は、青木繁伸氏の植物園のサイトへどうぞ。きれいな写真が掲載されています。