暑い日が続いています。日本の夏にはやはり扇子が欠かせませんね。最近は値段も手ごろな洒落た扇子がたくさん出回っていますが、私のお気に入りの一つは久保田一竹美術館で買った扇子です。もちろん本物の一竹辻が花ではないし(とても私などの手の届く品物ではございません)、生地も違うのですが、その美術館を訪れたときの感動と一竹辻が花の鮮やかさを思い出させてくれる、私にとっては大切な品です。
一竹辻が花染めは、室町時代に栄え、その後絶えてしまった縫締絞(ぬいしめしぼり)の辻が花染めに魅了された久保田一竹氏が、独自の研究を重ねて完成させた、たいへん美しい染めものです。よくぞここまで、と見るものを感嘆させずにはおかない色の積み重ねと精緻な模様には、どれだけの手間がかけられていることでしょう。この美術館には、できるだけ自分の作品を手元に残しておきたいと望んだ氏の作品が数多く展示されていて、それらはまさに絵画のようです。
ここを私が訪れたときは、折りしも庭のもみじが真っ赤に染まったこの上なく美しい秋でした。まだまだ残暑が続きますが、少し季節が移ろったら、いえ、夏休みでもきっともみじは爽やかに迎えてくれるでしょうから、是非一度、訪れてみてください。併設されている蜻蛉玉ギャラリーにも美しい蜻蛉玉(Glass Beads)がたくさんあって楽しめます。