いろは堂の九谷焼の紹介の中に時折、「十草」(トクサ)という文様が出てきます。左の湯呑みは十草模様を少しアレンジしたものです。一般に十草模様と言えば、縦縞の模様ですが、さて十草とはどのようななものだかご存知ですか? 実は、これが十草です。
トクサ科トクサ属の植物で、湿地に生える常緑のシダの仲間だそうです。先端に小さな胞子嚢が1つできますが、一年中こんな形をしています。シダ類にはスギナ(つくし)やぜんまいなどがあることを考えれば、花はおろか、葉っぱもない、こんな形でずっといる不思議さにも、ちょっと納得できるような気がします。
十草は「砥草」「木賊」とも書きます。茎が固く、ざらついているのですが、これを乾燥させたものを砥石のように木の表面を磨くのに使用することに由来しています。昔より家具(箪笥など)や工芸品(硯入れなどの木箱、わっぱ、和傘、印鑑、茶杓など)を作るときに、表面を磨いて仕上げるために使用されています。そのほか、目の薬としても利用されるそうです。
焼物の模様には、このように生活に密着した、身近にある物が多く描かれているのですね。
確かにトクサは面白い
どんな植物も「何故存在するのか」といえば勿論説明はつかない。
でも「トクサ」を見ると、聞いて見たくなる。
私のような粗雑な人間には、想像もつかないほどトクサは寡黙に見える。
トクサは古生代に繁栄したが、現在では15種(日本9種)ほどのようです。
日本庭園などでよく見かけますが、古来の庭園には多く使われた植物ですね。